アイアムアヒーローにまつわるエトセトラ

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 There're counter ZQNs

比呂美と紗衣 << [考察一覧] >> 汗についての考察

ZQNの起源に関する一考察

66話現在では、作品内で起こっているzqn現象について、その原因は解明されていません。最後まで解明されない可能性もあります。ここでその原因をあれこれ予想しても「答え合わせなし」で終わるかもしれません。

ただ、仮に具体的に語られないにしろ、本作は謎の正体を「読者の想像におまかせする」タイプの漫画ではなく、なんらかの明確な設定を元に話が進行しているものと思われます。

本稿では、例により以下の三原則のもと、ZQNの起源について考察してみます。

1. 作品内の出来事や描写をうまく説明できること、少なくとも矛盾の無いこと。
2. 科学法則に従っていること。テーマ的に完全に従うのは無理ですが、可能な範囲で科学法則に従っていること。
3. オッカムのカミソリ、つまり仮定の数は最低限であること

1. 神社編の謎

神社編(47話〜51話)では、富士5合目を目指して集まった人々の中でzqn現象が広がっていく恐怖が描かれています。その恐怖は、逃げ場の無い集団内で感染が広がるという恐怖と、その感染源となったのが赤ちゃんであるという恐怖の、二重の恐怖です。

ここでただちに疑問になるのが、なぜ赤ちゃんが感染源なのか?ということです。作品内の描写を追っていくと、一次感染者は乳幼児であり、それも一人だけではなく、複数の乳幼児から感染が広がっています。

神社編では、乳幼児がどこで、あるいは誰により感染したのかは一切描かれていません。神社内で彼らが感染した描写は無く、むしろ神社に連れられて来た時点ですでに感染していることが示唆されています。次表に、神社編で描かれている乳幼児をまとめてみました。

47話
13頁
(境内に向かう母子/母に抱かれてじっとしている乳幼児A)
48話
24頁
(父に抱かれてじっとしている乳幼児B)
「むずかんないね。めずらしい。」
48話
34〜37頁
感染して人々の足に噛み付く乳幼児(C)
48話
38頁
神木をよじ登る3人の乳幼児(C/D/E)(Cは上と同一)。
49話
39〜41頁
婦人を襲う乳幼児(C)(上と同一)
49話
43頁
(境内に向かう母子再登場)「お母さんつかれたわ」
母に抱かれてじっとしたままの乳幼児A)
49話
44〜49頁
比呂美の首筋に噛み付き、次いで議員を襲い、焚き火で炎上する乳幼児(F)
50話
61頁
母に抱かれたままzqn症状を発症する幼児(幼児Aと思われる)
51話
79, 81頁
82〜84頁
集団内から飛び出した乳幼児(G)。以降、英雄と比呂美を追い、荒木の車のフロントガラスに張り付いた末、振り落とされる。

以上、合計すると少なくともA〜G、7人の乳幼児が登場しています。

乳幼児Aは、神社に到達する前から感染していて、神社内で発症しています。乳幼児Bについては、発症した描写はありませんが、母親の「むずかんないね。めずらしい。」は、神社に到達する前から異状のあったことを示す台詞です。

他の乳幼児C〜Gについても、zqn症状は明確ですが、神社内で感染した描写はありません。

重要なポイントは、これらの乳幼児に、大きな外傷のある子は一人もいないことです。これくらいの大きさの乳幼児が成人ZQNの攻撃を受け、噛み付かれた場合、致命的な傷を負うはずです。zqn症状を発症する前に即死してしまってもおかしくはありません。

発症した乳幼児に、いずれも目立つ外傷がないことは、これまでの他のZQNとは異なり、彼らが他者に噛まれる以外の経路で感染したことを示しています。そもそももし自分の子どもが噛まれて負傷していたのであれば、AやBのように神社に抱えて連れてくることは不自然です。

もう一つ重要なポイントは、これら7人の乳幼児の発症したのが、数分から数十分と思われる短時間に集中していることです。

神社に来る前に感染していた可能性が高く、かつ神社にばらばらに集まってきたにも関わらず、ほぼ同じ時間帯に集中して発症したのはなぜでしょうか?

それぞれ別々の時間、場所で感染し、神社に連れてこられた乳幼児がたまたま同じ時間帯に集中して発症した、というのは不自然な話です。

一度どこか乳幼児が集まった場所で感染し、かつその感染手段が、潜伏期間が同じであるような感染の仕方であった、というのが合理的な考え方でしょう。そして各家庭にいったん帰宅した後、親に連れられ三々五々神社に集まったころがちょうど発症のタイミングであった、と考えるべきでしょう。

まとめると、

神社に登場した乳幼児ZQNたちは、

 1. 人に噛まれる以外の手段で感染した。
 2. 神社に来る前に、同一場所で感染した。
 3. 潜伏期間が同じになるような手段で感染した。

の3点となります。

この3点を満たす感染手段が神社での乳幼児ZQNの集団発生の原因であり、またそれこそが、そもそものZQNの起源となるものであると思われます。

2. 時代背景

本作は純然たるフィクションです。しかしその設定は、連載開始時、2009年当時の日本社会を背景としています。

たとえば、作品内に登場するインターネットのメッセージは、2ちゃんねるをモデルにした掲示板上でやりとりされています。もし現在(2011年)の社会が舞台でしたら、2ちゃんねるよりもむしろツイッターが使われそうです。しかし2009年当時の日本では、ツイッターを利用していたのはまだ限られた層でした。

そして、連載開始時、マスコミでもっとも喧しく報道されていたのは新型インフルエンザについてでした。数年来語られてきたその危険性は、前年初めにNHKドラマのテーマとして取り上げられ、「パンデミック」という言葉が流行語となりました。

連載開始時直前は、まさに新型インフルエンザの世界的流行がはじまった時期です。幸いこの新型インフルの毒性はそれほど強いものではなく、それが判明するにつれ世界的パニックは収まってゆきます。

しかし作者花沢健吾氏が、前年6月に前作「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の連載を終え、本作の構想を練っていた期間は、まさに予告されたパニックが現実化していく渦中でした。それは、本作のストーリー構想に大きな影響を与えたにちがいありません。

作品冒頭、英雄と徹子が登場し、二人を中心に物語が進む背景では、インフルエンザが社会に流行し、マスクをかけた人が街に行き交いします。

そして、インフルエンザの流行と軌を同じくし、日本中にzqn感染が広がっていく様が暗示的に描写されます。さらにZQN感染者は、特に徹子のように遅効型感染者の場合、zqn症状に先駆けてインフルエンザ症状を呈します。この2点は、zqnウイルスが、インフルエンザウイルス由来のものであることを強く示唆しています。

社会背景に話を戻すと、この年(2009年)の秋、厚生労働省より重要な発表が行われました。新型インフルエンザワクチンが、この年の流行シーズンまでに必要量確保できないため、その接種の優先順位を示したものです。

その優先順位とは、

1. 医療従事者 (100万人)
2. 妊婦 (100万人)
2. 持病がある人 (900万人)
3. 1歳〜就学前の小児(600万人)
4. 1歳未満の乳児の両親(200万人)

の合計1900万人を最優先対象とし、

ついでザワクチン接種が望ましい対象として、

5. 小中高生 (1,400万人)
6. 65歳以上の高齢者(2,100万人)

と定めたものです。

以上の社会背景と作品との関係について、下表にまとめてみました。

花沢健吾社会
2008


ボーイズオンザラン連載終了(6月)

次回作構想中(?)〜

NHKドラマ「感染爆発」(1月)

感染予防法制定(5月)





新型インフル発生(メキシコ/2月)
アメリカで新型インフル発生(3月)


日本で新型インフル発生(5月)


厚生労働省がワクチン接種の優先順位発表(9月)









2009
〜次回作構想中(?)

アイアムアヒーロー連載開始(4月)





2010



アイアムアヒーロー神社編(7〜8月)




3. ZQNの起源

2. で述べた時代背景、特に予防接種の優先順位について考慮した上で、1. で述べた3点を満たす感染手段を推定してみると、以下の仮説がもっとも有力であると思われます。

「zqn突然変異ウイルスは、新型インフルエンザワクチン製造中に混入、もしくは製造過程においてに発生し、早期にワクチン接種を受けた医療従事者や乳幼児を中心に最初のZQN患者が発生し、全国に広まった」

神社で発生した乳幼児ZQNたちが、近傍の医療機関で集団予防接種を受け、それがZQNウイルスの感染源であったとすると、彼らに外傷が見られなかったこと、また同じ条件でワクチンを摂取したため、潜伏期間がほぼ同一であったことの説明がつきます。

実際の社会では、新ワクチンは2009年の秋以降に向けてのものですが、作品内では1つ前のシーズンに向けてのものだったという想定です。

つまり乳幼児たちは、神社における一次感染者であるだけでなく、医療従事者、老人、そしておそらくは社会におけるVIP待遇者たちと並んで、日本全体のZQNの一次感染者の一部を構成した、という可能性が高いと思われます。

1巻背景のテレビニュースで描かれたように、zqn感染が一箇所からでなく、日本各地で同時発生したことは、この仮説の傍証となるでしょう。

同じく、初期感染者に老人ホーム住人や、厚労大臣や首相というVIPが含まれていたことも、この仮説を裏付けます。

「預言者」来栖の母親は、パンデミックの三週間前に発症しました。彼女は、早期に予防注射を受けた医療従事者だったのでしょうか。

[66話現在 2011/02/12]

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