アイアムアヒーローにまつわるエトセトラ

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 There're counter ZQNs
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 第40話 [スピリッツ2010年No.24号(5月17日発売号)掲載]
01 [1コマ目(上段)]
英雄が「ちょっ、ちょっと…」と声をかけるのも意に介さず、なにごとか決意を秘めて足を踏み出す比呂美。

[2コマ目(下段)]
恐る恐る覗き込む比呂美と、唖然とした表情の英雄。比呂美が何をしようとしているかは理解できないが、とりあえず危険な状況ではなさそうだ。

02 [1コマ目(上段)]
「ガリ ゴキ バリ」

見下ろす比呂美の前で繰り広げられているのは、つい半日前まで普通に女子高生の暮らしをしていた、比呂美の級友同士の解体作業である。

[2コマ目(中段)]
「ブチチ」

両腕を、加奈子Zの上あごと下あごにかけ、上下に引き裂こうとする紗衣Z

[3コマ目(下段右)]
声もなく惨劇を見つめる比呂美。目の下のクマは、前号にも増して濃い。

[4コマ目(下段左)]
ついに上顎を外されてしまった加奈子Zの下顎をつかむ、紗衣Zの血だらけの手。前号の描写でもほぼ息絶えていたように見えた加奈子だが、「頭部切断」がゾンビ死亡の要件であるとすれば、これでゾンビとしても完全に息絶えてしまっただろう。

03 [1-3コマ目(上段)]
一瞬気を失いそうな表情をするものの、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる比呂美。

伊集院光のラジオのコーナー風に言うと、私(管理人)にとってこの顔は『中1のとき、飼っていたゴールデンハムスター・メスが、数日前に産んだ子どもを頭から囓り、内臓の少しはみ出した下半身だけを両手に持って、キョトンとした顔でこちらを振り返ったのを見たときの俺の顔』(実話)でもある。

[4-7コマ目(中-下段)]
比呂美は、背負っていたカバンを地面に置き、ブレザーを脱ごうとする。

「!?」。やはり比呂美が何を始めようとするのかわからない英雄。

比呂美はブレザーを拡げ、落ち着いた表情で紗衣Zにそろそろと近づく。

04 [1-2コマ目(上段)]
気配を察して振り向く紗衣Zの凄惨な顔に、思わず目を閉じる比呂美。紗衣Zの目は血だらけであるが、まだしっかりと見えているようだ。

[3-5コマ目(中-下段)]
激しく動悸しつつも、冷静さを失わない比呂美は、足元の倒木の陰から一本の枯枝を拾う。

05 [1コマ目(上段右)]
比呂美が口元に差し出さした枝に、反射的に噛みつく紗衣Zの口。

直接的には紗衣に噛まれないようにするための行為だが、これは、かつて英雄が、徹子Zにティッシュを噛ませた行為をなぞった描写であろう。

詳しくは後述するが、樹海で紗衣Zが比呂美に追いついて以降のストーリーは、徹子Zと英雄の最後のシーンを正確になぞる流れになっている。

[2-3コマ目(上段左-中段)]
比呂美は、冷静に紗衣Zの顔にブレザーをかぶせた。

[4-5コマ目(下段)]
紗衣Zを縛るために肩を踏みつけてしまった比呂美は、思わず「ごめんっ」と謝る。このキチンとしたところが、比呂美の魅力の一つではなかろうか。

06 [1-2コマ目(上段)]
「ふ〜〜〜〜」と一段落したかのように息をつく比呂美。依然としてその行動を了解できない英雄。

[3コマ目(上段)]
縛りが甘いため、バタバタと暴れる紗衣Z

[4コマ目(下段右上)]
あわてて、辺りを見回す比呂美。

[5コマ目(下段右下)]
比呂美はとっさに自分のカバンを使おうと、中身を地面に振り落とす。

落された中身には、リップクリーム、日焼け止めのようなボトル、タオル、メモ帳などにまじり、携帯(AU W52SA)も含まれているようだ。

[6コマ目(下段左)]
空いたバッグを両手に、背後からそっと紗衣Zに近づく比呂美。

07 [1-2コマ目(上ー中段)]
紗衣Zの顔にガッとバッグをかける比呂美。

視界を奪われたせいか、紗衣Zの動きが止った。しかし、その手はまだ加奈子Zの右手を、千切れるほどの強さでつかみ続けている。

[3-5コマ目(下段)]
目を見開いたまま、比呂美の一連の行動をただ見守ってきた英雄。

振り向いた比呂美の発した言葉「…これで病院に…」で、ようやく比呂美の行動の意図が明らかになった。比呂の微妙な表情は、運ぶのを協力してほしいという懇願の表れだろうか。

さて、この「病院に」のセリフは、英雄にとっても、おそらく(私を含む)おおかたの読者にとっても意外なセリフではなかっただろうか。

まだ生きているとはいえ、紗衣Zの下半身はすでに失われ、はみ出した大腸がずるずると伸びている。普通に考えて、病院に連れて行ってどうなるという状態ではない。

比呂美は、冷静な観察力と判断力を持つ女子高生である。それは、首吊りZに対峙したときを含め、ここまでのいくつものエピソードで示されている。だが、無意味と思える病院行きに固執している今の比呂美の行動は、冷静な判断に基づくものではあるまい。

そもそも、紗衣Zを撃つと言ったり、病院に連れて行くと言ったり、その判断も極端にブレすぎている。比呂美の心の中で、彼女の冷静さを失わせる葛藤が生じているのは間違いないであろう。

08 [1-2コマ目(上ー中段)]
英雄と比呂美は、上半身だけになってもまだ生きている紗衣Zを引き、病院に向かおうとする。

「はっ」「はつ」「ふっ」「ふっ」と息切れする二人。

紗衣は、やや大柄な女子高生であった。上半身だけとはいえ、30kg前後はあるだろう。抵抗の多い樹海の地面を引いて歩けば息も切れる。とはいえ、担いだり背負うのは危険すぎる。

さて、前ページからこの8ページへの間には、いくつか省略があるようである。

まず1コマ目で比呂美の引いている方は、彼女自身がかぶせたブレザーを縛った袖口である。一方英雄の引いている方は?どうやらジャンパースカートを縛った袖口のようだ。

前話(39話)ラストと今回の最初のシーンでは、紗衣のジャンパースカートはすでに脱げてしまっており、加奈子Zと争っている場所近辺にも落ちていない。脱げ落ちていた紗衣の(あるいは加奈子の)ジャンパースカートを拾ってきて、下半分を縛ったのであろう。(※)掲示板でご指摘いただきましたが、これは英雄が着ていたパーカーでした。

あれほど強く加奈子Zの右手首をつかんでいた紗衣の手を開くのも、結構大変ではなかっただろうか?

そして、前話16ページ目でもしっかりと描かれていた包帯はどうなったのであろうか。2巻表紙が示唆するように、紗衣Zの顔に巻かれていた包帯には、今後のストーリ上、重要な役割がありそうである。

また、不通であるとはいえ、女子高生が自分の携帯を捨てたまま立ち去るとは考えがたい。描かれてこそいないが、包帯と携帯は拾い上げたのではないだろうか。

もう一つ、加奈子の死体はどうしたであろうか。憎んでいたとは言え、キチンとした性格の比呂美である。埋葬までする余裕があったかどうかはわからないが、そのまま放置したとは考えにくい。

ただ、包帯と加奈子の死体については、再度この遺体の散乱した現場に戻ってくるという展開が後々あるのかもしれない。

[3-5コマ目(下段)]
病院の位置を確かめるやりとり。比呂美「林間学校の奥にありました」。

「林間学校」という表現が使われたのはここが始めて。これまではずっと「自然学校」。たまたまここで別の表現を使ったのか、あるいは「自然学校」という用語があまり一般的でないので言い換えたのか。もし単行本で訂正が入れば後者ということになる。

09 英雄は比呂美に紗衣の噛まれたいきさつを尋ね、「林間学校」で噛まれたのが紗衣だけでないこと、また、噛んだ先生と紗衣が病院に行ったことを聞かされる。

10 絶句し、立ち止まる英雄。比呂美もまた無言で英雄を見つめる。

「病院もやばいぞ」。英雄にとって、もはや病院に向かう選択はあり得ない。

11 それでもなお病院行きに固執する比呂美に、英雄はその危険性を説明し、思いとどまらせようとする。

話を断ち切るように突然「しっ」と英雄を制した比呂美。前話14ページでの二人の立場を逆にしたやりとりだが、制されてビビリまくる英雄の気の小ささが比呂美と対照的である。

比呂美「しーーーーーーーーーー」

12 比呂美「声が。」

耳をすまし、あたりを伺う英雄と比呂美。

「ケ」「フフ」。声が聞こえてきたのは、二人の足元、紗衣Zの頭にかぶせられたカバンの中からだった。

13 カバンの中から聞こえてきた紗衣Zの言葉は「フケ」。そう、昨夜、「比呂美ちゃん、フケ多いよね〜」と傷つけた言葉を、再び紗衣Zは比呂美にぶつけようとしている。

懸命に押さえていた比呂美の感情があふれ出す。

林間学校の前日、紗衣とは、虹の踏切で心を通わせることができた思った。仲良くなれるかもと期待させられた。しかし昨夜、紗衣は比呂美に意地の悪い言葉をぶつけ、加奈子達と共謀し「比呂美ちゃん空気読もうよ」と深夜の樹海へと追いやった

実際には、37話の感想でも書いた通り、紗衣の言葉は決して底意地の悪さゆえのものでもなければ、その行動は、比呂美をイジメようとしたものではなかったはずだ。

だが、今の比呂美にはそれは通じない。、紗衣Zは、この状況になってなお凶器となる言葉を比呂美にぶつけようとしている存在だ。

別れの時が迫りつつあるのに、すれ違う二人の思い。

諦めと怒りの感情からだろうか。目を覆う比呂美の手は、おそらく流れでた涙をぬぐうとするものだろう。

14 [1コマ目(上段)]
ぐっと目をぬぐう比呂美の腕。その拍子に、ブラウスの袖がヒジまでめくれ上がり、これまで隠されていた手首が英雄に見えた。そこには、幾筋もの薄い、だが明瞭な傷跡があった。

凄惨な現場に遭遇しながら平静さを失わない比呂美の反応は、胆力の強さを通り越し、むしろ感受性を欠いているのではないかという印象すら与えるものであった。だが、その手首の傷跡は、彼女もまた深い苦悩と絶望を内面に抱え、それゆえ心を抑制するすべを身につけてしまったことを示している。

[2コマ目(中段)]
紗衣たちにイジメられていたという比呂美の告白を、そのリストカットの跡を見ながら無言で聞く英雄。

[3-4コマ目(下段)]
英雄は銃を樹に立て掛け、バッグから、防音用のイヤーマフを取り出した。

ここで重要なことは、英雄がこの時点で紗衣Zを撃とうと決意したことである。決して、比呂美に押し切られて撃とうとしたわけではない。

そもそも英雄にとっては、すでに紗衣Zを撃つ必然性は失われている。最初に紗衣Zを撃とうと決意した局面では、倒れた比呂美を守らねばという必然性があった。しかし今の攻撃力を失った紗衣Zをあえて撃つ行為は、無駄弾の消費以外のなにものでもない。

そうなると、英雄に再び銃を撃たせる決意をさせたのは、比呂美のイジメられていたという告白と、そのリストカットの跡、ということになる。だがこれは、動機としては、いささか弱いという印象を受ける。「フケ」の意味を悟り、目の前の紗衣Zが、比呂美を自殺未遂に追い込んだ相手だと理解したとしても、英雄自身がそこまで憎しみを感じるだろうか。

その落差を補うものがあるとすれば、それは英雄自身の体験に由来するものであろう。

15 [1コマ目(上段)]
「もう、助けたいのか殺したいのかよくわからなくなっちゃった」

ここでようやく、比呂美の冷静な判断力を失わせていた心の葛藤の正体が明らかになる。

紗衣に対する、表裏一体となった愛憎の思い。思慕する想いがあるがゆえに救おうとし、抑えきれない憎しみがあるがゆえ、その命を絶とうとする。

そして相反する感情は互いを強めあい、時に大きく判断をぶれさせた。

おそらく比呂美が加奈子に対して持っているであろう、憎しみ一方の感情であれば、ここまで気持ちがぶれることはなかっただろう。もし危険な存在となれば、英雄が撃とうとするのを妨げはしなかったであろうし、害の無い存在となれば、病院に連れて行く気も起こさなかったはずである。

愛憎をあわせもつがゆえに、カバンの中から聞こえてきた声が、比呂美の負の感情を爆発させてしまったのだ。比呂美の中に存在していたかどうかもわからない、殺意に至る感情を呼び起こしてしまったのである。

これは英雄が、ゾンビと化した徹子の口から「なかたさんすごい」の声を聞き、嫉妬とコンプレックスを刺戟され、手に持った包丁を振り上げたときの心の動きとまったく同じものである。

樹海で紗衣Zが比呂美に追いついて以降のストーリーは、徹子Zと英雄の最後のシーンを正確になぞる流れになっていると前に書いた。

以下、それを具体的に列挙してみる。

1) ゾンビと化した後も、徹子Z(紗衣Z)は英雄(比呂美)を襲おうとはしなかった。少なくとも、非常に抑制的な攻撃であった。

2) むしろ英雄(比呂美)を襲うとした新聞配達Z(加奈子Z)に戦いを挑み、相打ちに近いかたちで撃退する。

3) ささいいなことであるが、英雄は徹子Zにティッシュを噛ませ、比呂美は紗衣Zに枯れ枝を噛ませた。

4) ゾンビと化した徹子(紗衣)を見ながら、英雄(比呂美)は、徹子(紗衣)が「人間」であった頃の自分に対する心遣いを回想する。

5) だが英雄(比呂美)は、徹子Z(紗衣Z)の口から漏れた言葉に激高し、その命を絶とうとする。

これは、明らかに同じ流れを意図的に踏襲させたものだろう。

結果として、英雄はてつこの首を切り落とした。

英雄はその後、その行為を何度も正当化しようとする。徹子はすでに死んでいた。人間ではなかった。そう思いこもうとする。

それが真実であるかどうかは、現時点では明らかになっていない。だが、それを疑う気持ちは、英雄自身の中に確実に存在している。

その原罪意識は、今後、英雄の行動を強く規定していくのではないだろうか。そして、比呂美をも。

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[2頁見開き]
今回はここまで比較的小ゴマで進行してきたが、ほぼ最後に来ての見開きページ。右ページに比呂美、左ページに銃をさげた英雄。

俺がやるからこれで耳をふさいでとイヤーマフをつけてくれた英雄に対し、「私がやります」と答えた比呂美。簡単で、それだけに強い決意表明。気圧される英雄。

なお、このページの構図から、銃身と比呂美と英雄の身長の比が、およそ11.8:21:26であることがわかる。従って、この銃のスペックがわかれば二人の身長もおおよそ見当がつく。詳しい人、ぜひ情報をください

18 [1コマ目(上段)]
「…重いよ」と言いながら銃を手渡す英雄。

もちろん、単に銃の重さについて言及したセリフではない。比呂美に銃を手渡すことを承諾したという意味のセリフであり、比呂美が撃つことを承諾したという意味のセリフである。

[1コマ目(上段)]
重さを確かめるように、受け取った銃を持つ比呂美。

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